スタッフ笹森です。
「建設工事」を請け負う中で、「この業務は建設工事に該当するのだろうか?」と判断に迷うケースは少なくありません。
何らかの「調査」に付随して行われる作業について、関東地方整備局に確認した内容や各種法令・資料に基づき、特に判断が分かれやすい以下の2つのケースについて解説します。
1. アスベスト事前調査のための「足場設置(解体)工事」
2. 地質調査に伴う「掘削工事」
アスベスト事前調査のための「足場設置」は
建設工事か?
建設工事に先立ってアスベスト事前調査が行われる際、その調査のために足場の設置・解体が必要になることがあります。
この「調査のための足場設置(解体)工事」を下請として受注した場合、これは建設工事に該当するのでしょうか?
結論:建設工事に該当します
流れとしては
「①仮設足場設置 → ②アスベスト調査会社による調査 → ③仮設足場解体」となり、あくまで調査のための足場設置です。
しかし、足場工事は仮設とはいえ「工作物の設置(解体)」にあたるため、建設工事として捉えられます。
建設業法上の工事区分では、「とび・土工・コンクリート工事」の内容として「足場の組立て…等を行う工事」が示されており、その例示にも「足場等仮設工事」が含まれています。
【補足】調査会社が足場工事を含めて受注した場合は?
少しややこしいのですが、元請の立場で論点が変わるケースがあります。
▼ケースA:アスベスト調査会社が「調査業務」として足場工事も含めて受注した場合
この場合、主たる目的は「調査」であるため、建設工事には該当しません。
▼ケースB:上記(ケースA)の調査会社が、足場工事を専門業者に下請発注した場合
この場合、下請業者が請け負う業務は「足場工事」そのものですので、建設工事に該当します。
地質調査に伴う「掘削工事」は建設工事か?
では、足場工事と同じように「とび・土工・コンクリート工事」の例示に含まれる「掘削工事」はどうでしょうか。
地質調査に伴って「掘削工事」を行う場合、これも建設工事になるのでしょうか。
結論:建設工事に該当しません
神奈川県の手引きにおいても、「建設工事に該当しない業務の例」として「運搬、残土搬出、地質調査・埋蔵文化財発掘・観測・測定を目的とした掘削」が明記されています。
なぜ足場設置と結論が異なるのか?
この違いについて、以下のような見解が示されています。
(建設工事としての)掘削は、最終的にそこに建物が建ったり道路ができたりしますが、調査目的の場合は、通常埋め戻して終わりで、工作物ができあがることがありません。
建設工事とは、建設業法によれば「土木建築に関する工事」、日本標準産業分類によれば「工作物及びそれらに附帯する設備を新設・改造・修繕・解体・除却若しくは移設すること」や「土地、航路、流路などを改良若しくは造成すること」とされています。
つまり、調査目的の掘削は、工作物を築造したり土地を造成したりするものではなく、原状回復(埋め戻し)を前提としているため、建設工事とはみなされない、という整理になります。
まとめ
同じ「調査目的」であっても、
• 足場設置(解体):仮設であっても工作物の設置・解体にあたるため、
建設工事となる。
• 地質調査の掘削:工作物ができあがらず、埋め戻して終わるため、
建設工事とならない。
という違いがあります。
建設業法上の「建設工事」に該当するかどうかの判断は、許可の要否や法令遵守に関わる重要なポイントです。
自社の業務が建設工事にあたるかご不明な場合は、ぜひ専門家である行政書士にご相談ください。
行政書士法人ブリジアスは、建設業に特化した行政書士法人です。
建設業許可に関しますお困りごと等がございましたらお気軽にご相談くださいませ。

